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2016年05月06日

『白暮のクロニクル』第8巻読了(ネタバレ注意)

週刊連載には手を出してしまったが、とびとびにしか入手できなかったため、わたしの中ではこれで全部が繋がったことになる。
単行本になるときに台詞などに手が入っているので、以後は、単行本を原本として考えていくことにする。

*  *  *

さて……、今回は古池議員のグループなどという、あからさまにオキナガたちを敵視して弾圧を強めようとする権力内部の連中が登場したり、魁への憎しみに醜く歪んだ綾音の顔が出てきたりと、オキナガに対する非オキナガたちのどす黒い感情が赤裸々に描かれて、すっかりオキナガ派になってしまっている身には、読んでいて辛いところがある。

オキナガ派の梶田議員を陥れたのも、古池議員のグループみたいな連中に繋がる、「オキナガを嫌い貶めようとしているグループ」なのだろう。
梶田直がああいう方向への犯罪に走ったのは、何者かに巧妙に操られてのことだとわたしは思っている。
梶田直が自分でオキナガに関する情報を集めるなら、まずは手に入りやすい新刊本から始めると思うのだが、彼が参考にしたのは、あの時点で既に入手困難になっていた古い通俗本だった。
だとしたら、こうした古い通俗本を梶田直に与えるなどして、かれに知恵を付けた人物がいるのではないかと思うのだ。
で、気になるのが、第4巻30ページで、久保園が鞄にしまっていた本ということになるのだが……。

綾音は、まだ非オキナガであった魁が棗の前に登場した時から魁に対してあまりいい感情を持っていなかったようだから、魁がオキナガだからというだけでそういう感情を持ったというわけではないかもしれない。
綾音は魁に姉を取られることを恐れたのかも、などとわたしは想像していたりする。

*  *  *

思えば、今まで『白暮のクロニクル』が丁寧に巻を重ねてきたのは、読者にオキナガたちに好感を持たせて、オキナガたちに共感を寄せる方向へと導くためだったようにも思われる。

大木戸事件の犯人のような殺人鬼のオキナガもいるように、オキナガの中にもいろいろな人がいるわけだが、読者が感情移入してこのマンガを読んでいるであろうあかりが出会ったオキナガたちは皆、気持ちのよい連中ばかりだった。

人間としてちょっと問題があるかもしれない紫堂や久我井のようなオキナガとは、あかりは直接会っていない。

あかりが直接接したオキナガたちにしても、いろいろなものを抱えて生きていて、あかりには見せない影の部分も持っているはずなのだが、あかりがその偏見のない自然な目でオキナガたちと接したことで、構えることなく自分たちの光の部分で自然に振る舞うことができたのだろう。

過酷な状況を生き延びてきた希梨香なども、実際は相当黒い部分を持っていそうだが、あかりの前では素直に振る舞っている。
平気で憎まれ口を叩くのも、心を許しているからだろう。
希梨香は通常、非オキナガに対しては、相手を見ながら本心を隠して、極力相手の気に入られるように振る舞っているが、あかりに対してだけはそれがない。

*  *  *

で、「羊殺し」。

次のターゲットは多分あかり……、で、そのあかりを「大きな羊」と呼んだ人物は、

 1.入来神父
 2.魁の兄と称する少年の姿をしたオキナガ
 3.包丁を研ぎながら歌っていた顔のわからない、多分これが次の事件の実行犯と思われる男

で、包丁を研いでいた男は、入来神父か魁の兄と称するオキナガのどちらかと同一人物かもしれない。
第8巻170ページの絵を見ると、包丁を研いでいる人物の肌に網がかけられておらず、また、裸の肩から腕のあたりが結構細身に見えるところから、魁の兄と称するオキナガではないかとも思われるのだが……。

で、二人乃至三人の人物が怪しくて、このうち二人がオキナガであるということになると、「羊殺し」はやっぱりオキナガで、しかも複数犯なのだろうか?

しかし、「僕はまぎれもなく「羊殺し」の1人」と言っていた鳥飼は非オキナガだった。
もしかすると、鳥飼はあかりが「大きな羊」であることを知っていて、そのあかりを殺しかけたから、自分も「「羊殺し」の1人」と言った……なんてことはないかな?

*  *  *

魁の兄と称するオキナガは何者なのだろう?

竹之内はそんなにたくさん血分けのこどもを作っているわけではないようなので、かなり以前に彼が血分けをした相手なのだろうか?
それとも、鈴川なえのように、竹之内自身が知らないまま血分けをしてしまうことになった相手なのだろうか。
そしてその彼もまた歴史上の誰か……だったりするのだろうか?


キリスト教関係の美少年ということで頭に浮かんだのは、天草四郎時貞なんだけど、これはないかなぁ。

*  *  *

そういえば、希梨香も大阪方残党である切支丹の村の出で、彼女の血分け親は竹之内のように思われるのだが、顔がはっきり描かれていないので、違うのかもしれない。

とにかく竹之内は1600年以上も生きているのだから、その長い人生の間に何があってもおかしくはない。

今回もまた、雀城英了(ささぎえいりょう)などという、日本古代を思わせる名前の人物が出てきて、何かあるのではないかと思わせられるたりもする。

ああそうだ、紀課長は竹之内と自分の関係を知らなかったんだねぇ……。
だったらあの嫌みな性格は生来のものってことなのか……(>_<)

*  *  *

竹之内が伊集幸絵に「身元引き受け人がいなければ、子供とも引き離されて施設に入れられます」と言っているのを「あれれ?」と思って読んだのだが、これはつまり戦前戦中までのことであって、竹之内がオキナガ部隊を作るなどして尽力した結果、戦後は、社会に適応できるスキルのあるオキナガは、身元引受人がいなくても長命者登録をすれば、日本の国民として、社会の中でおおっぴらに暮らしていけるようになったのだと、そう解釈していいのだろうか。
第3巻に出てきた、巻上さんをはじめとする市井に暮らすオキナガたちに身元引受人がいるとは思えない。

もっとも、物語の現在、光明苑から生きて出て行くオキナガがいなくなっていることを考えると、古池議員のグループみたいな連中による揺り戻しが起きていて、いったん施設に入れられたオキナガが施設を出ることは難しい状況になっているようにも思われる。

*  *  *

伊集幸絵が殺された時、パンティストッキングをはいていたが、この時代にはまだパンティストッキングはなかったと思うので、ちょっと残念。
我々のリアルワールドとはパラレルワールドの関係にあるこの世界では、この時代に既にパンティストッキングがあったということで、納得するしかないのかなぁ。

*  *  *

第8巻172ページ、新幹線の中で一行が食べていたお弁当。

竹之内さんが叙々苑の焼肉弁当、2,300円、久保園さんが新杵屋の牛肉どまん中、1,150円で、魁とあかりが食べていたのが何なのかは今のわたしにはわからない。

しかし、食べることにぜんぜん興味のなさそうな竹之内さんの前に、一番高そうで量も多そうな弁当が手を付けられることなく置かれていて、一番大食いのあかりの前に置かれているのが一番量の少なそうな弁当だってのは……、あかりちゃん、何考えてるの? と言いたくなってしまう(>_<)

牛肉どまん中のフタを取った久保園さんは、なんだか、嬉しそう。

*  *  *

竹之内さんはオキナガになったときには既に眼鏡が必要な状態であったと思われるのだが、長い長いその人生の大半を不自由な思いで生きてきたであろう竹之内さんに、生まれて初めて眼鏡をかけたときのことを聞いてみたい。
世界の見え方がずいぶん変わったのではないかと思うのだが……、やっぱり感動したんだろうなぁ。

5月13日追加 :
ケアレスミスだろうなぁ。
按察使文庫の玄関チャイムがそのたびに違う音になっている(>_<)
第1巻33ページ、久保園さんはノッカーでゴンゴン。
第1巻156ページ、あかりがノッカーでゴンゴンゴン。
第6巻66ページ、須本美和来訪時のチャイム音はリンゴーン。
第7巻79ページ、巻上さん来訪時のチャイム音はリンゴーン。
第8巻110ページ、竹之内さん来訪時のチャイム音はピンポーン。

『白暮のクロニクル』第7巻、読了。久保園さんが怪しいよ〜。゜(゜´Д`゜)゜。 (ネタバレ注意
『白暮のクロニクル』とうとう禁断の週刊連載に手を出してしまった(^^ゞ (ネタバレ注意)
『白暮のクロニクル』第10巻読了(ネタバレ注意)
posted by 庵主 at 05:24|
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