書籍データは持っている本のものです。現在最新のデータではありません。
『太字斜体』の見出しは書籍名、「太字」の見出しは単行本収録の作品名です。
「斜体」は引用です。
泣けた(T.T) |
記憶喪失のホームレスの“流(ながれ)”が、自死を覚悟した日にゴミの中から拾った赤ん坊“アナン”は、人の心の闇を吸い取り浄化する能力をもっていた……。
泣けるお話。
なんの社会的立場もないホームレスたちが自らを捨てて、必死で赤ん坊を守り育てる過程がとっても感動!!
芸術家の才能を発揮して世界に羽ばたこうとする“アナン”の邪魔にならないようにと“アナン”と離れた“流”があんまりすぐにあっさり死んじゃうっていうところは、“蓼虫”にはちょっと物足りなかった。別の道へと歩みだした二人の人生がそれぞれに続いた後に、おとなになった“アナン”と“流”の人生が再び交差してあの結末にたどり着くって形で“蓼虫”は読みたかったなぁ……。
眼前に現れる魔界都市の世界 |
“菊地秀行”の人気シリーズ“魔界都市〈新宿〉”のガイドブック。
いささか漠然としていた“魔界都市〈新宿〉”の世界が具体的に眼前に現れる感じで嬉しかった。
特に地理的な具体性が楽しい!!
そうかぁ、“秋せんべい店”はあそこにあるのかぁ。でも、あそこに今、老舗のせんべい屋なんてないぞ……とかね(^^ゞ
しかし対談の中で、“菊地秀行”が自らの“アッピン・ダンギャノン”(『暗黒太陽の浮気娘』)ぶりを披露しているのはおかしかった。
ぼく、書いたの? あれ、そういう設定だったっけ? あれ、香港から来たんじゃなかったっけ? あ、違うの? あれ、ちょっと待って…。そういう話なら、面白い。やろう、やるやる。そのうちやりましょう。
面白い、面白い。…めちゃくちゃやん…みんな忘れてる(笑)。
いや、そんな内容覚えてないもの。そんなこと書いてあったっけ? なんっにも覚えがない。忘れちゃうんだなぁ。へとへとで、うえ〜〜と思ってるからすぐ忘れちゃうんだ…。
という調子。
“ダンギャノン”との違いは、“菊地秀行”が“魔界都市〈新宿〉シリーズ”を嫌っているわけではないところだと思うんだけど……、どうなんでしょう?
『ファンタジー ノベルズ ガイド』の『魔界都市ブルース』の記事にリンクを張っておきます。
『魔界都市〈新宿〉』関係は書籍が多く、データは完璧ではありませんが、『ファンタジー ノベルズ ガイド』を参照してくださいm(__)m
『中継ステーション』を想起 |
都会生活に破れ、離婚して故郷に帰ってきた“トム”が購入した家は、“タイム・トンネル”の設置された“タイム・トラベラー”の家だった。
ここで、あまり意に染まない生活を始めた“トム”に、未来からの侵入者によって殺された“タイム・トラベラー”から助けを求めるメッセージが届き始めるのだが、彼はその声に耳を貸さず……。
“タイム・トンネル”を管理して旅行者の世話をするために設けられた家がアメリカの片田舎にひっそりと存在するという設定や、“タイム・トンネル”の管理人“ベン・コリアー”のあり方、ひととなりには、“シマック”の『中継ステーション』を思わせるところが多く、かつて“シマック”を愛読した身には、懐かしいような、でも、それを単純に喜んでいいのかどうか見極めがつかず、ちょっと複雑(^^ゞ
責任感がなく優柔不断で見当違いな方向へ現実逃避したがるだけの主人公は嫌いだけど、まわりに、道理がわかっていてわきまえているいい奴等が多くて、それで全編を読み通せた。
主人公のかつての同級生で、ちょっと特別な自分になるために超常現象に巻き込まれることを夢見ている、友情に厚い不動産屋のアーチャーがとってもいい
しかし、彼に児童虐待の過去を持たせることに何か意味があるんだろうか?
彼が、やはりもののわかった画家の卵の“キャサリン”と、地について多分幸せな自分達の未来へ向かって旅立って行ったのは、とってもよかった。
そういえばこの小説、主人公以外の人々は、それぞれ、自分の幸せを見つけてきちんと未来へ向かって歩き始めるのに、主人公だけは、自分の道を見いだすことができず、中途半端なままで取り残されて終わりというわけで、まぁ、自業自得という気もするけど、“蓼虫”にとっては、主人公に感情移入して読み通すのがやっぱり辛い小説ではありました(>_<)