前半部分、主に文壇事情をゾンビを絡めて描いているあたりはおもしろく読めて、特に、やたら噛みつきまくるゾンビになってしまった無頼派の破天荒作家とか、ゾンビ作家をメッタ斬りにする居合いの達人の書評家なんてところは思わずニヤリとしてしまったりもしたのだが……。
政府系研究機関なるものが出てきたあたりから、あれれ? というところが目につくようになってきて、結末近くで「変質暴動者化/“救世主”化分ける鍵」が政府判断によって公示されたところで、完全にわけがわからなくなってしまった。
この小説の権力側は、大衆のゾンビ化を促進したいのか阻止したいのか。
わたし自身が馴染んでしまっている「SF的文脈」によってこの小説を読んでしまったためにそのように感じるのかもしれないが、どうも、論理が破綻しているように思えて仕方がない。
読みが浅いのかなぁ……。
人間存在そのものが矛盾に満ちたものなので、論理が通らないところもまた、現実に照らし合わせてリアルと捕らえる読み方もできるのかもしれないが……うーん……どうなんだろう?