著者は、言わずと知れた、妖怪漫画家の水木しげるです。
これは、妖怪たちと一緒の世界に生きていて、超自然のものたちと違和感なくつき合うことのできる水木しげるが見ている、ちょっと違った世界への道案内のような本なのです。
著者が妖怪たちと暮らした少年時代。
妖怪たちの世界を著者に橋渡ししてくれたのは、村の貧しいお婆さん“のんのんばあ”でした。
がき大将になって喧嘩に明け暮れ、絵を描き、生来の収集癖にのめり込み──、一昔前の田舎の自然のなかで、著者は勉強な
どする暇のない、充実した少年時代を過ごします。
けれども楽しい少年時代の隣では、貧しさのための悲惨が日常にあって、のんのんばあもまた、貧しさのなかに痛ましい死を迎えます。
貧しいけれども優しい人たちを犠牲にして、やがて日本は、先の見えない暗い戦争に突入し、著者もまた、兵隊としてラバウルに送られてしまいます。
理不尽な軍隊生活。
過酷な毎日……。
ここで片腕を無くした水木しげるが現地の人たちに助けられ、彼らと感動的な交わりをするお話が、『(娘に語る)お父さんの戦記』です。
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