コラム

"MA" NO SEKAI by Nata Toshirou

「魔」の世界

那谷敏郎


アトラスに通じる阿修羅

「──幽鬼妖怪、総称して魔は人間を惹きつける。人間が創りだすのも、善神より魔神のほうが得意だ。──略──彼ら魔たちの風貌、性格、通力を知ることによってこそ、彼らを生んだ各風土、各民族、各社会の特徴が露わになってくる。」
──著者による惹句より

世界各地から集めた膨大な“魔”を検証する一冊。
“魔”に対しての深い愛情が感じられ、読んでいて楽しい本になっています。

「ガンダーラ美術の、年代の古いものほど、アスーラの背が高くなる。高くなると同時に、生き生きとして、堂々と“仏陀のいま
坐す”世界を支える風情になる。──略──“仏陀の坐す所”は、つまり世界なのだから、今、その下にいるアスーラは、実はアトラスだったということになる」

という指摘は、興福寺の阿修羅像の大好きな私には、新鮮で楽しい発見でした。


『「魔」の世界』  "MA" NO SEKAI by Nata Toshirou  那谷敏郎 著  1986年12月20日  新潮選書

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