実験考古学とは「過去の人間活動の実態にせまる手段として」の「実験による研究法」です。
著者は「それまでまともに扱われることのなかった実験考古学を、学問として体系化しようと試みている」のですが、実験の一つ一つのエピソードが、その語り口の軽妙さと相まって、たいへんユーモラスにおもしろく語られています。
「青銅器時代の皮製盾と金属薄板製盾を複製し、その防御性能をテストした実験。著者は用心深くも、完全に役立つと思われた皮製盾を手にした。金属盾のほうは、ただ一回切りつけただけで切れてしまった。」
「十九世紀の古物研究家であるキャノン・W・グリーンウェルは、手にしたものは何でも味わってみたという評判である。そして、多分に出典の疑わしい話によれば、ロバート一世の乾燥させた心臓──聖地にあった貴重な遺品である──を手にするや、特に意識しないままいつもの調子で口中に投じ、途中で失敗に気がついたが、そのままゴクリと飲み込んでしまったという。」
古代をありありと再現してくれるたくさんの実験が語られますが、特に古代人の生活を追体験するために、当時の道具と技術だけに頼って自然のなかに生活してみようとする実験などは、ファンタジーに多く取り上げられる前近代の生活への理解を深めるためのよい手がかりとなってくれるものです。