書籍データは持っている本のものです。現在最新のデータではありません。
『太字斜体』の見出しは書籍名、「太字」の見出しは単行本収録の作品名です。
「斜体」は引用です。
| 自己主張していく“雪風”が嬉しい(o⌒∇⌒o) |
南極大陸に打ち込んだ超空間通路を通って地球侵攻を開始した謎の異星体ジャムに対して、地球人類は、超空間通路の向こうの惑星フェアリイに最先端の戦闘機械システムと消耗品扱い要員を送り込んで戦闘を繰り広げることになる。
特殊戦第５飛行隊に所属して高性能高機能の戦術戦闘電子偵察機“雪風”を駆る“深井零”は、愛機との特殊な関係がジャムの着目するところとなり、この戦闘の要とも考えられる存在になっていく……。
『戦闘妖精・雪風』の続編。私にとっての“ＳＦ”らしい“ＳＦ”を読んで満足満足(^^)
主人公の“深井零”にしっかり感情移入して、“雪風”との交歓に一喜一憂し、至福の楽しみを味わえた。
今回の“神林長平”は、“現実認識の不確実性”といういつものテーマがちょっと薄れて、主人公自身に確固とした自己があって揺るがないため、私にはとっても読みやすかった。（あんまり現実が揺らいでしまうお話は私にはちょっと辛い(>_<)）
ぶつ切りの文章を使わず、語尾がきちんとしているのも私には気持ち良い。
“非群生”“個生主義”（と作品中で評される）主人公の“深井零”の人生哲学、生き方には非常な共感と憧れを覚えるけれど、“特殊戦”みたいな人間集団はとっても理想だけど、ああいう生き方を実践して、きちんと自立して行くには、いろんな意味で力が足りなすぎるもんなぁ(__;)
前作では、主人公の所有物としての“彼女”でしかなかった“雪風”が自己をきちんと表明するようになって、主人公と対等の“何か”になっていく様もなかなか嬉しかった。
もっとも前作のラストで既に、主人公の幻想の“彼女”であることを拒否した“雪風”は、主人公に強烈なしっぺ返しを食らわせているんだけど……。
今回は、“雪風”が“彼女”という代名詞で表されることがないのも象徴的。
“雪風”は“女”でも“男”でも“人間”でもない“何か”なんだから。
| とにかく“李歐”がカッコいい |
失踪した母の謎を探る大学生“一彰”のアルバイト先のナイトクラブで、５人の男を射殺して悠然と闘争した殺し屋は、美しい中国人の若者だった……。
この作者、作品が絶望的な救いのない場所へとどんどん傾いていくため読むのが辛くなっていたんだけど、今度は希望を書きたくなったのかなぁ。
『わが手に拳銃を』の全面的な書き直しなんだけど、キャラクターそれぞれの内面が深くなり、主人公を魅了する美貌の殺し屋“李歐”がえらく鮮やかに輝いて、全編が主人公と“李歐”（どっちも男なんだけど）の熱く激しい恋物語に絞り込まれて、読んで気持ちのよい、読後感の幸せな作品になって、私は嬉しかった……ちょっと調子よすぎる気もするし、“橘夫妻”は前作の方がよかったけど。
警察の田丸が生き延びたのもよかった。
作者が敵を個々人ではなく時代と社会状況に定め、翻弄される個々人に対してはどんなにゆがんでしまっていても許そうと、そんな風に変わったのではないかと思わせる１冊で、次の作品がとっても楽しみ。
| 『源氏物語』が身近になって嬉しい写真集 |
実物の４分の１に造った建物模型と華麗な衣装を着せた人形によって『源氏物語』の世界をリアリスティックに体験できる楽しい写真集。
“打出（うちいで）”の解釈、“玉鬘・衣配り”の装束、特に表着の織り模様の色の解釈、“かさねの色目”が透き通って見えないなど、“蓼食う虫”が思っていたのとは違うところもけっこうあるんだけど、これを学術的に考えるには“蓼食う虫”は力不足(^^ゞ
“かさねの色目”に関しては、随分前の本だが、当時の染めや織りをできうるかぎり再現してみたという『別冊 太陽 源氏物語の色』が美事だった……と、私は思う。
