書籍データは持っている本のものです。現在最新のデータではありません。
『太字斜体』の見出しは書籍名、「太字」の見出しは単行本収録の作品名です。
「斜体」は引用です。
逞しい婆さんになりたい |
六畳一間の安アパートに間借りする僕の布団に夜毎添い寝に現れる幻の恋人の正体は……。
表題作が好き(^^)
この作者、老婆をよく描くけど、決して恵まれた境遇にあるとはいえない彼女たちが、それぞれしっかりとたくましくて嬉しい。
自己責任が強調される世の中は、自分自身でしっかり生きてくほかないもんなぁ(^^ゞ
なりふり構ってる余裕なんかないんだ!!!
私もえぐくて逞しい自分勝手な婆さんになりたい!!!(「復活、へび女」の婆さんはえぐくも自分勝手でもないかわいい(?)婆さんだけど)
他に、目の不自由な女の子が見た不思議な花の咲く木の話「木になる花」が“蓼虫”は好き(^^)
目が見えないこと……自分が他者と違っていることをまだきちんと自覚していない幼い主人公の少女と友達になって、彼女の世界で一緒に遊んでくれる少女の優しさが心に滲みた。
ちょっと危険な気分 |
リストラで退職寸前の主人公が、入社に当って尽力してくれた会社の会長に頼まれたCM製作の仕事。
経営不振の原因を作ったとされる会長は自殺し、主人公は、自殺の真相を探って動き始める。
実は主人公は、かつてヤクザの大親分だった男の一人息子であり、並みのサラリーマンにはない力と過去があった……。
読んでるときはとっても爽快だったけど、読み終わってよくよく考えると、なんだか、まわり中が主人公を甘やかしていただけの物語だったようにも思えてきて、うーん、これでいいんだろうかと思ってしまった。
リストラに怯えるサラリーマンの夢物語ってとこかな?
それぞれに逞しい女たちが魅力。
これを読んで、つい勇ましい気持ちになって会社に辞表を叩き付けたくなるサラリーマンが出てくるかもしれないけど、力もコネもない身は慎むっきゃないわけで……、“蓼虫”は、しばらく危険な心地でありました(^^ゞ
素直に感動 |
洞爺丸の遭難現場で見つかった記憶喪失の青年は、創世期のテレビ局に職を得て、一人の女優に恋をする。彼は、しかし、女とは結ばれぬまま事故に遭い、時を逆上って昭和初期の日本に出現する。
時を巡る能力を身につけた彼は、女を守って、昭和の様々な時代を生きることになる……。
懐かしい味の“時間SF”。
今回の“辻真先”は、直球勝負という感じで、素直に読めて感動できた。
あんまり捻られると“蓼虫”はちょっと辛かったりするんです(^^ゞ
好きだけど嫌い!! |
私にとっては徹底的に好きなところと徹底的に嫌いなところがくっきりと色分けされる作品で、泣けたけど読後感はすっきりさわやかカタルシスというわけにはいかずなかなか複雑。
大甘の少女マンガ的ナルシシズムの権化みたいな“アカリ”のキャラクターが大嫌い!!
でも、状況設定はとっても好き。
永遠の童女である老婆の“ルナちゃん”もいいなぁ(⌒~⌒)